甑島、めぐる景色とたぐる記憶

海を渡り、潮の香りに包まれながら、この島へたどり着く。
甑島ーーその名の響きには、どこか記憶をたぐり寄せるような感覚がある。
かつて、漁をする者、旅をする者、そして住まう者が、時の流れの中でこの島を形づくってきた。
風は穏やかにめぐり、波は静かにたぐる。
ここには、ただの「場所」ではない、心をほどく空気が流れている。
島の道を歩けば、遠くに佇む断崖、砂浜に降り立つ海鳥、そして浜辺に残された足跡。
一歩、また一歩と進むたびに、過去の記憶がふとたぐり寄せられるような不思議な感覚がある。
甑島の時間に身を委ねると、日々の喧騒からそっと解き放たれる。
ここは、ただ「訪れる」場所ではなく、めぐる時間の中で「感じる」場所なのかもしれないーー。